
●テロリズムということ/イクバール・アフマド発言集から-2
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………テロリズムとは何か?
………『ウェブスター版カレッジ英語辞典』には……「恐怖(terror)とは、激しい、圧倒的な恐れ(fear)である」。テロリズムとは「統治の手段もしくは政府への抵抗の手段として、恐怖に陥れるような方法を用いること」とあります。この簡潔な定義には、大きな長所がひとつあります。すなわち公平な定義であるという長所が。
………わたしたちはテロの理由が正当か不当かについて語っていません。語っているのは、コンセンサス、同意と同意の不在、適法性と適法性の不在、合法性と合法性の不在です。どうして動機の問題を排除するのでしょう?
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………テロリズムに五つのタイプを見出しました。すなわち、国家テロリズム、宗教的テロリズム(カソリック教徒がプロテスタントを殺し、スンニー派がシーア派を殺し、シーア派がスンニー派を殺す、といったもの)、犯罪的テロリズム、そして対抗的テロリズムです。時にこれら五つは収斂したり重なりあったりします。対抗的な抗議テロリズムは、病的な犯罪的テロリズムになりえます。国家テロが私的テロのかたちをとることもあります。
………なぜ、彼らはそれをするのでしょう?
彼らの動機は何でしょうか?
………すぐにも出せる答えをいくつかお話したいと思います。ひとつは、耳を貸せという欲求です。思い出してください。わたしたちが扱っているのは少数派集団、政治的・私的テロリストなのです。
………たとえば、わたしたちの時代におけるスーパーテロリストたるパレスチナ人のことを考えると、彼らは1948年に国を奪われました。1948年から1968年にかけて、彼らは世界のあらゆる裁判所に告訴しました。彼らはあらゆる扉をノックしたのです。彼らは国土と国家を完全に奪われたというのに、彼らの訴えに誰も耳を傾けてくれません。絶望のあまり彼らは新しいテロの形態を発明します。航空機ハイジャックです。1968年から1975年にかけて彼らは世界の耳目を引いたのです。その種のテロは、暴力的な方法をとおして、長いあいだ鬱積してきた不満を一挙に表明するものです。それは世界に耳を傾けさせるのです。通常、それは、みずからの無力を痛感している小規模の集団が実行します。
………第二に、テロは怒りの発露でもあります。やりきれなさの、怒りの、そして孤独な感情の発露なのです。
………もうひとつの要素は裏切られたという感覚で、それはあの部族的な復讐の倫理と結びついています。ビン・ラディンのような人を思い浮かべれば、これは明確に理解できます。合衆国の同盟者であり、アメリカを友と考えている男がいる。しかし彼は自分の国が占領されているさまをみて、裏切られたと思うのです。正義や不正の感覚があるかどうかを言っているのではありません。このような極端な暴力の背後にあるものを記述しているのです。
………時に、他者の手による暴力を経験した人間が暴力の担い手になるというのは事実です。虐待を受けた犠牲者は時に暴力的な人間になるのです。………犠牲者になるという経験そのものが暴力的な反動を引き起こすのです。
………最後に革命のイデオロギーが存在しないことが、わたしたちの時代にテロリズムが蔓延している主要な原因です。十九世紀にマルクス主義とアナーキズムの間で起こった大論争の主要な争点のひとつは、テロという手段を使うかどうかということでした。マルクス主義者は、真の革命家は暗殺をしないと主張しました。社会的問題を個人的暴力行為によって解決することはできない。社会問題は、社会的そして政治的な動員を必要とし、したがって解放闘争はテロリズム組織とは峻別されるべきである、と。革命家たちは暴力を認めなかったわけではありませんが、革命の実現可能な戦術として暴力を却下したのです。そのような革命イデオロギーは現在、消えてなくなりました。
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………<ジハード>は、これまで何千回となく「聖戦」と翻訳されてきましたが、それとは無関係です。アラビア語でいう<ジハード>は「闘争する」を意味します。この闘争は、暴力によるものを意味することもあれば、暴力によらない闘争を意味することもあります。形式もふたつあります。小さな<ジハード>と大きな<ジハード>。小さな<ジハード>は外面的な暴力をふくみます。大きな<ジハード>は自己との闘争をふくみます。だいたいこれが概念のあらましです。
わたしがこれに言及した理由は、イスラムの歴史において国際的な暴力現象としての<ジハード>は、過去四百年間、現実的な目標とはなりませんでした。それが一九八〇年代にアメリカの支援とともに突如復活してくるのです。ソ連がアフガニスタンに侵攻介入したとき、アフガニスタンと国境を共有する隣国パキスタンの大統領ジヤーウル・ハックは、罰あたりな共産主義をやっつける絶好の機会とばかりに、アフガニスタンでの<ジハード>を開始したのです。合衆国も、レーガンが<悪の帝国>と呼んだソ連との戦いに、十億のムスリムを動員できる、神から恵まれた好機をそこに見出しました。お金が流れ込みはじめます。CIAのエージェントはムスリム世界をかけめぐる偉大なる<ジハード>に参加する人びとを募りはじめます。ビン・ラディンは、早い時期に徴兵に応じた掘り出し物的新兵のひとりでした。彼はたんにアラブ人というだけでなく、みずからの資産を戦争に惜しげもなく投入できるサウジの大富豪だったのです。ビン・ラディンはみずからも、共産主義との<ジハード>のため兵士集めに奔走しました。
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………オサマ・ビン・ラディンは合衆国の同盟者でした。……ところがある時期彼は背を向けたのです。一九九〇年アメリカはサウジアラビアに軍隊を派遣しました。サウジアラビアというのは、ムスリムにとっては聖なる場所、メッカとメディナという二つの聖地を抱える国なのです。その地へはいかなる外国の軍隊も足を踏み入れたことはありませんでした。一九九〇年湾岸戦争にいたる兵力増強期間中、サウジアラビアの防衛を支援すると言う名目でアメリカ軍が入ってきます。オサマ・ビン・ラディンは黙認していました。サダムは破れます。しかしアメリカの海外派遣軍は<クバ>(メッカにおけるイスラムの聖地)の地にとどまりつづけています。
………ビン・ラディンは何通も手紙を書きました。なぜ、おまえたちはここにいるのか? 出てゆけ! おまえたちは助けにやって来ただけなのに、とどまりつづけている。とうとう彼は外国人の占拠者に対して<ジハード>を開始します。彼の任務はアメリカ軍をサウジアラビアかあr追い出すことです。その昔、彼の任務は、ロシア軍をアフガニスタンから追い出すことでした。
………彼について述べておくべき第二の点は、彼の出自が部族であることです。富豪であることは関係ありません。彼の倫理規範は部族的なものです。その規範の中心にあるのが二つの言葉です。すなわち「忠誠」と「復讐」。君は、わたしの友だ。君は約束を守る。わたしは君に忠誠を誓う。君は約束を破る。わたしは復讐の道をゆく、というわけです。彼にとって、アメリカは約束を破ったのです。
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………では、アメリカに対して、わたしはどのような勧告ををすればいいのでしょうか?
第一点。二重基準の濫用を避けることです。もし、あなたが二重基準を実践するなら、かならず二重基準によって報復されます。使ってはいけないのです。たとえば、いっぽうでイスラエルのテロを、パキスタンのテロを、ニカラグアのテロを、エルサルバドルのテロを容認しながら、もういっぽうでアフガンのテロやパレスチナのテロを非難するようなまねはしないことです。公明正大であるべきです。超大国が、ある場所でテロを支援しながら、べつの場所でテロをやめるよう説得できると期待などできません。
………同盟国のテロを容認しないことです。非難すべきです。戦うべきです。罰するべきです。
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………テロリズムは政治的問題です。政治的決着を求めることです。外交が手腕を発揮すべきところです。ビン・ラディンに対するクリントン大統領による攻撃を例に挙げてみましょう。アメリカ政府・軍関係者は、何を攻撃していたのか知っていたのでしょうか?
彼らは知っていると言っていますが、ほんとうは知らないのです。べつの事例として彼らがカダフィ大佐を殺そうとしたことがありました。しかし彼らが殺したのはカダフィの幼い娘でした。このかわいそうな娘はなにもしていないのです。カダフィは生きています。彼らはサダム・フセインを殺そうとしました。しかし彼らが殺したのは、ライラ・ビン・アタル。前途有望な芸術家で無辜の女性でした。彼らはビン・ラディンとその部下を殺そうとしました。関係のない二十五人が死にました。彼らはスーダンの化学兵器工場を破壊しようとしました。しかしいまでは彼らも認めているように、破壊したのは、スーダンの医薬品の半分を製造する薬品工場だったのです。
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………ローマには国際刑事裁判所があります。なぜ合衆国はまずそこへ行き、ビン・ラディンを告発するための証拠を提出しないのでしょうか。もし証拠を持っているというのなら、とにかく国連を動かすことです。国際司法裁判所を動かすべきです。逮捕状を手に入れるべきです。そうしたうえで彼を国際的に捜査すればいいのです。