季刊「銀花」/2007冬/第百五十二号
銀花萌芽帖
漆がつないだ「カブールの幽霊/谷根千リレー展」


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器を修復する手法の一つに、漆直しがある。東京に住む陳富子さんと加藤不二さんがこの伝統技法を知ったのは、今夏のことだ。二人はアフガニスタンの子供たちにファンタジー映像を届け、日本国内では現地の子供たちが描いた幽霊画の展覧会を開いている。ある時、活動資金を得るために作ったたくさんのマグカップを粉々に割ってしまった。取り返しのつかないことをしてしまった。落ち込んでいた時、新聞記事で漆直しを知る。
「破壊から再生」へ。これはアフガニスタンへの祈りと重なるのではないか。陳さんたちは、早速全国の金継ぎ職人へボランティアの協力を募る手紙やメールを書いたのだった。
これにこたえたのが、本誌第百四十九号でも取り上げた谷中の金継ぎ職人、加藤りつ子さん。多くの人と手を携えて楽しく協力できればと、ワークショップ開催を思いつく。集まったのは初心者十数人(写真)。割れたカップを一人一つずつ持ち帰り、揃いの道具で手を入れていく。こうして会場を提供してくれた近所の雑貨店店主や陳さんたちも加わった、器直しの夏がはじまった。
漆は柔軟な天然接着剤だ。生のままでも使うが、小麦粉と練り合わせれば粘りが出て協力になる。樟脳で薄めれば細かいひびにも入りやすい。下地粉を混ぜれば、厚みが出る。根を詰める仕事だが、時間と自然を味方につければ、器の傷はゆっくりといえ、物への愛着も増していく。
秋風が吹くころ、両手ひとすくい分の陶片は、十数個の器に生まれ変わった。降り積もった時間の重みが、一つ一つの形に重ねられている。それらをりつ子さんが受け継ぎ、ていねいに仕上げていった。
この冬、谷中・根津・千駄木のギャラリーや雑貨店など七か所で、そのマグカップと、カブールの子供たちによる色とりどりの絵が展示されることになった。割れたものが完全に元に戻ることはない。けれども、漆はばらばらになったものをつなげ、新たな命を与えることができる。陶片と陶片を、人と人を、場所と場所を。漆の接着力たるや大したものではないか。
問合せは、NPO法人「ライクウォーター・プレス」(電話03-5394-8138)へ。
●2008年1月9日(水)から14日(月)まで、「喫茶 谷中ボッサ」にて。
●1月10日(木)から20日(日)まで、「クラシコ」「千駄木空間」「ギャラリー・オカリナ」「青空洋品店」「レプロット」にて。
●1月12日(土)から20日(日)まで、「ヒグレ17-15 キャス」にて。